現在の研究テーマ(エネルギー物質化学)


写真:花火

・煙火組成物(花火)の劣化機構の解明


 煙火は一般には花火と呼ばれる、古来より娯楽品として用いられてきた混合火薬類です。 煙火は吸湿の問題を抱えており、吸湿によって劣化することが知られているものの、劣化現象の詳細な把握と劣化による燃焼の変化は十分に検討されていません。そこで、煙火の安全利用を目的に、吸湿性の高い過塩素酸アンモニウム/マグネシウム組成をモデル物質として、吸湿現象の理解とそれに伴う燃焼性能変化および自然発火危険性について研究し、煙火劣化の問題と危険性の把握を行っています。さらに、耐湿性向上について検討を行い、現場での吸湿問題への貢献を目指しています。


写真:花火

・木炭の組成が黒色火薬の燃焼速度に与える影響


 黒色火薬の燃焼速度は花火の性能を大きく左右します。黒色火薬に可燃剤として使用される木炭は原料が天然物であることから毎年燃焼性能が異なります。また、燃焼速度は火薬調製後にしか評価できないという問題があります。そのため、黒色火薬調製前に燃焼速度を予測する手法が求められています。事前に燃焼速度を予測することができれば火薬調製時のリスク・コスト削減に貢献することができます。多変量解析を用いて木炭の多種存在するパラメータが黒色火薬の燃焼速度に与える影響を分析しています。


・高エネルギー物質の劣化現象及び影響の解明


 劣化とは、人類が扱うあらゆる製品に対して旧来付きまとう問題です。様々な劣化要因は製品の性能に変化を及ぼし、想定外のエネルギー放出挙動に繋がることで事故の原因にもなります。火工品は高エネルギー物質を利用した製品であり、他の製品と同様に劣化の問題が存在します。性能変化した火工品は、目的を完遂するための機能喪失や設計外のエネルギー放出挙動が人々に危害を加える恐れがあります。高エネルギー物質の外部劣化要因として、湿度や振動を想定した試験が実施されているが、劣化現象の詳細な把握及びエネルギー放出挙動の影響は十分に検討されていません。そこで当研究室では、火工品を取り巻く環境変化に伴う、劣化要因として気体の接触を想定し、性能への影響を検討することで、高エネルギー物質を利用した火工品のさらなる安全性向上を目指します。


・共結晶生成による新たなエネルギー物質の合成


 共結晶は、分子間力により2種以上の分子が結びついた分子結晶です。2種以上の分子が一つの結晶内に存在しますが、塩などと異なり、結晶内で分子は単体と同じ状態を保っており、ファンデルワールス力、πスタッキング、水素結合といった分子間力のみによって結びついています。分子の構造を変えないまま、物性を変化させることのできる手法として、主に医薬分野で用いられています。この共結晶をエネルギー物質に応用することで、反応性を変化させた結晶を作成することが可能です。当研究室では、窒素を多く含むエネルギー物質であるアゾール類の性能向上を目指して共結晶の作成を行っています。

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