現在の研究テーマ(プロセス安全化学)


写真:誘導期

・誘導期を呈する反応の反応機構解析


過酸化水素と塩化第二銅の混合反応により過酸化水素の分解が促進され、発熱反応と分解ガス生成が起こり、それにより爆発に至るおそれがあります。しかし、ある一定の条件下では過酸化水素の分解反応が表面的に進行せず停滞し、ある時を過ぎると急激に進行し、暴走反応に至ります。この暴走反応を引き起こすまでの時間を誘導期と呼びます。この誘導期を有する過酸化水素と塩化第二銅混合反応に関して、塩素の過酸化水素による酸化で生成される塩素オキソ酸と銅が過酸化水素への分解反応の促進と一時的な分解反応の抑制作用を働かせ、誘導期に影響を与えているのではないかと考えられ、反応メカニズムの解明に取り組んでいます。

反応熱量計の測定精度向上のための新規時定数補正方法の検討


反応熱量計は、化学反応に伴う熱量変化を測定する装置です。反応熱量計は装置や測定試料自体の熱容量を原因とする伝熱遅れが発生しますが、分析ソフトや装置に組み込まれたヒーターを利用した時定数補正により対策しています。ここで、時定数とは測定値の一階微分項の係数であり伝熱遅れの大きさを表す定数です。本研究では、反応の進行に伴って試料の物性が変化する測定系に対して、新規の時定数補正方法の検討を ①既存の時定数補正式の拡張、②ヒートパルスという既知の熱の矩形波を測定中に印加する方法の導入の2つの側面から行っています。伝熱遅れを補正して熱的な挙動を正しく把握することで、安全なプロセス開発への貢献が期待されます。

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