研究概要

研究活動

化学物質は我々の生活を豊かにしますが、いったん反応が制御できなくなると、爆発に至るなど甚大な影響を社会に与えます。本研究室では、化学反応が暴走しないようにするにはどうすればよいか、安全に化学反応を進行させるにはどうすればよいか、また、豊かな社会に貢献するためにその反応をどのように応用できるか、をテーマに研究を行っています。さらに、さまざまな化学反応・人・モノの集合体である化学プラントを安全に運転するためのヒューマンファクターや組織管理を含む総合管理技術・効果的な安全教育についても研究しています。化学物質を使った実験,コンピュータソフトウエアを用いたシミュレーションや調査研究を通じて、複合的な要素のからむシステム全体の安全を考えていきます。

【プロセス安全化学】

図1
図2

化学プロセスとは化学反応を利用して、原料を人の役に立つ物質に変換していくものです。私たちの周りにある、暮らしをより豊かに,便利にしてくれる物質は社会に無くてはならないものですが、しばし自然発火や反応暴走,混触危険性などの危険性を呈することがあります。安全な化学プロセスの利用のためには、物質の反応性,プロセスの特徴を十分に把握した上で行う操作・管理が必要です。

本グループでは、化学反応プロセスのどこに危険性が潜んでいるかを研究し、反応機構を化学的に解析して化学プロセスの火災・爆発防止策を検討しています。また、化学プロセスの事故発生の可能性を確率的に扱うことでリスク算定に貢献する技術の開発に取り組んでいます。

主な研究テーマ

・化学物質のライフサイクルにおけるハザード検討
・暴走反応解析による防止策の立案
・化学プロセスの事故発生リスク算定技術の開発

現在の研究テーマ

・誘導期を呈する反応の反応機構解析
・反応熱量計の測定精度向上のための新規時定数補正方法の検討
・新規反応プロセスのハザード検討

【エネルギー物質化学】

図3
図4

エネルギー物質は、熱,摩擦,打撃などわずかな刺激で分解する物質です。ニトロ基,アジド基などの置換基や共役系構造などの化学構造の違いにより、エネルギー量,感度などのエネルギー物質の性質に大きな影響がもたらされています。エネルギーの貯蔵庫ともいえる高エネルギー物質は、瞬間的な分解で得られる熱や分解生成ガス,光などのエネルギーを利用して、様々なデバイスに利用されています。有益な物質ですが、取扱いによっては大きな被害を生じることから、性質の十分な理解が求められます。また、目的に応じてより高い性能を示すこと、低環境負荷であること、など様々な課題を解決する必要があります。

本グループでは新規エネルギー物質の分子構造の設計・合成,安全利用のための研究や、エネルギー物質の特性を生かした利用の提案を行っています。

主な研究テーマ

・新規エネルギー物質の設計・合成
・エネルギー物質の危険性評価手法の構築
・エネルギー物質機能の高度利用

現在の研究テーマ

・木炭の組成が黒色火薬の燃焼速度に与える影響
・新規エアバッグ用ガス発生剤の合成に関する研究
・共結晶化による新たなエネルギー物質の合成
・エネルギー物質の劣化現象と劣化の影響の解明
・火薬組成物の劣化防止手法の開発

図5

【安全管理】

化学プロセスを始めとした複雑なシステムには様々なリスクが内在しています。多様なリスクに対し、低減する努力を常に続けることが重要です。適切に低減するための技術の構築として、特に損失拡大防止のための手法の整備,またNatech対策のための指針構築について研究を行っています(Natech=Natural and Technological Hazard:自然災害によって起こされる産業災害)。また、化学プロセスについての安全教育手法の開発にも取り組んでおり、日本の産・官・学からの研究者と共同して化学プロセス安全教育用の教材を作成し、タイ,台湾の研究者と共に日・泰・台3か国間の教育効果比較研究を行いました。

Cascading natural hazards, Kumasaki et al. (DOI 10.1007/s11069-015-2028-8)

図6

主な研究テーマ

・Natech対策手法の検討
・被害低減策の包括的分類
・化学プロセス安全教育

現在の研究テーマ

・作業者の安全衛生対策による認知行動変容解明
・被害低減策の分類と自然災害への適用

関連プロジェクト

厚生労働科学研究費(労働安全衛生総合研究事業)「定性的手法を用いた労働災害防止対策に対する労働者の認識の分析」:組織が行う安全対策に対して、主に企業で働く人がもつ意識分析を行っています。

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